2016年8月3日水曜日

福岡にて報告集会を開催します

安永健太さん死亡事件裁判報告集会のお知らせ


チラシ ←申込はこちら

最高裁上告、実質審理することもなく棄却!

2007年9月25日、佐賀でおきた安永健太さん死亡事件は、
本年7月1日、最高裁でご遺族による上告を棄却し、裁判は終了しました。
しかし、お父さんは、「この闘いは終わらない」と思いを語られました。
この事件の一連の裁判と運動を振り返り、
私たちが築きあげてきたことを確認し、
これからもこの事件を多くの人たちに伝え、
障害のある人の人権を地域で守っていく取り組みを
広げていく新たな出発点として、報告集会を企画しました。

とき:2016年8月6日(土)
     受付 午後1時から午後1時30分~3時30分

ところ:ふくふくプラザ5階視聴覚室
   福岡市中央区荒戸3丁目3番39号 
       「唐人町」駅下車 4番出口から徒歩約7分

内容:
遺族あいさつ
全国弁護団からの報告
「考える会福岡」からの報告
応援メッセージ

安永健太さん死亡事件を考える会福岡事務所

福岡市南区柏原4-25-26  電話 092-567-7766 / FAX 092-567-7788

チラシ ←申込はこちら

2016年7月8日金曜日

最高裁上告棄却

2016年7月1日付で、
最高裁判所より上告棄却を決定した通知が届きました。
非常に残念ながら、これで民事裁判も終結となります。
しかしながら、下記の弁護団声明にもあるとおり、
「たとえ最高裁で敗訴するとしても、この闘いは終わらない」と、
宣言した健太さんのお父さんの思いを、私たちも共有し、
二度と健太さんのような犠牲者を出すことのない
社会の構築のために、いっそう力を注ぐこと、
社会内のすべての人びとに、その理解を求めることを、今後も継続していきます。


安永訴訟最高裁決定に対する弁護団声明

2016年7月8日
安永訴訟弁護団
弁護団長 河西 龍太郎

本年7月1日、最高裁判所第二小法廷は、
弁論期日を経ることなく、
安永訴訟福岡高裁判決に対する
安永健太さんのお父さんと弟さんによる
上告を棄却する決定を言い渡した。
本件は、中等度の知的障害があり
自閉症もあったと思われる25歳の青年が、 
就労支援先から自転車で帰宅中に、
パトカーで警ら中の警察官から
薬物中毒者と決めつけられ、
有形力を行使され、最終的には、
アスファルトにうつ伏せにして
4名以上の警察官から後両手錠の状態で
押さえつけられて、心臓突然死したという、
まことに痛ましい事案である。

一審の佐賀地裁判決が、
社会内に多数の知的障害者や発達障害者が
存在する事実について全く配慮・言及しなかったのに対し、
二審の福岡高裁判決は、警察官には、
相手が知的障害者であると認識していない場合においても、
そのように推認できる場合には、
ゆっくりと穏やかに話しかけて近くで見守るなど、 
その障害特性を踏まえた適切な対応をすべき
注意義務があることを一般論として認めた。
その点では一定評価できるものだったが、
本件については、注意義務違反はなかったとした。
これに対し、私たちは、警察官職務執行法、国家賠償法、
民事訴訟法の解釈の誤り、および、
障害者を差別してはならないという平等原則(憲法14条)に
違反したことを理由として上告し、
障害者分野等の専門家の意見書も添えて提出した。
しかしながら、最高裁は、
民事訴訟法上の上告理由に該当しないという
形式的理由をもって、上告を棄却した。

わが国における障害者権利条約の批准、
障害者差別解消推進法の制定とその施行、
関連する法改正等の経過に鑑みれば、
障害がある青年として自分らしい毎日を
精一杯生きていた安永健太さんが、
現場の警察官らの無理解による乱暴な対応によって、
身体の動きを制圧され、理由もわからないまま、
極度の緊張と興奮のために
心臓突然死させられた事実は、決して看過できない。

それにも関わらず、最高裁判所が、
実質審理することなく、
上告理由にあたらないという形式的な理由で
上告を退けたことについては、
人権の砦として担っている少数者の人権擁護という
職責を放棄するものとしてここに厳重に抗議する。

最高裁判所は、本年4月25日、
「ハンセン病療養所等における特別法廷につき、
差別的な取扱いが強く疑われ、違法だった、
定型的な運用で特別法廷が開かれ、偏見、差別を助長した。
患者の人格、尊厳を傷つけたことを深く反省し、おわび申し上げる」
との声明を表明している。

しかし、かかる差別的な取扱いは、
ハンセン病療養所に限らず、
あらゆる障害者関連施設や地域社会の場面で見られ、
とりわけ健太さんのような知的障害・発達障害のある
当事者にとっては日常的に遭遇することである。

現に、本件について、
控訴審において5万8930筆の切実な署名が
寄せられており、また、
本年6月17日に東京で開催された支援集会には
135人の支援者が集い、
「障害のある自分の子どもも警察官に
不審者と誤認され、ひどい扱いを受けた。他人事ではない。」など、
二度と同様の被害が生じないよう、
声を上げていくこと、国や地方自治体が責任をもって
警察官等に対する啓発を行うよう
働きかけ続けていくことを確認したところである。

このたびの上告棄却については、
極めて遺憾であるが、この訴訟闘争を通じて、
出会うことのできた心ある方々、当事者、関係する専門家の声と行動から、
社会を変えていくことが出来るという確信を得ることができた。 

「たとえ最高裁で敗訴するとしても、この闘いは終わらない」と、
宣言した健太さんのお父さんの思いを、私たちも共有し、
二度と健太さんのような犠牲者を出すことのない
社会の構築のために、いっそう力を注ぐこと、
社会内のすべての人びとに、その理解を求めることを、
改めて強く宣言する。 





2016年6月29日水曜日

上告理由書の学習会を実施! 2016年6月17日

2016年6月17日、
東京のYMCAアジア青少年センター国際ホールにて
上告理由書の学習会を行ないました。
135名が参加し会場は満員となりました。



●開会あいさつ
 古賀知夫(安永健太さん死亡事件を考える会 福岡事務所)



●弁護団長あいさつ
 河西弁護団長(弁護団)



●事件の経緯報告
 國府弁護士(弁護団)



●ご家族からの発言
 
お父さま

改めて事件が起きた日のことをお話しいただきました。



弟さん

今の思いを率直にお話しいただきました。



お2人にお話しいただいき、
参加者一同、改めて安永健太さん事件の裁判を支援していくことについて、
思いと意識が一致しました。


●応援メッセージ

 田中さん

 東京・町田市のSOSボードのとりくみを紹介いただきました。


 志岐さん

 神奈川における安永健太さん事件裁判支援について紹介いただきました。
 

  斎藤 貴男さん

  安永健太さん裁判に関心をもたれた経緯、励ましをいただきました。




●上告理由書内容レクチャー
 藤岡弁護士(弁護団)


解説レジュメはこちら

民事裁判判決を改めて振り返り、争点について
上告理由書はどう対応しているのかを解説しました。


●閉会あいさつ
 藤井克徳(日本障害者協議会代表)


安永健太さん裁判の支援を継続していくこと、
各地域で障害者理解を警察と連携し深めていくこと、
を提起しました。


現在、上告理由書は最高裁にて審査中です。

障害のある人が社会で自立して生きるための足かせになりかねない、
安永健太さん死亡事件裁判。

安永健太さん死亡事件とは何か、
ぜひ周りの人たちに知らせてください。

※わかりやすいパンフレットはこちら

そして学習会をしたい、と思われましたら
ご連絡いただきましたら調整いたします。


2016年6月2日木曜日

2016年6月17日に学習会を開催します

2016年2月に提出した上告理由書を学習し合い、
最高裁が開廷されるよう、応援のきもちを強めていきましょう!


















申込はこちらから



●日時
2016 年 6月17 日(金)13:00 開場 13:30 ~ 16:30

●場所
YMCAアジア青少年センター 9階国際ホール

〒101-0064 東京都千代田区 猿楽町2−5−5

(最寄:JR水道橋駅・御茶ノ水駅、地下鉄神保町駅)

※館内にエレベーター・車いす用トイレあり。

●内容
・福岡高裁までの経過と到達
・弁護団による最高裁上告理由書についての解説
・応援メッセージ
・遺族からのメッセージ

●資料代
500円(パンフレットや上告理由書など)
※当日は手話通訳あります。

2016年5月27日金曜日

上告理由書の主な内容について



2015年12月21日、福岡高等裁判所で、安永健太さん死亡裁判の判決が下りました。

控訴棄却、敗訴判決でした。

健太さんのご遺族と弁護団は、最高裁判所で争うことにしました。

最高裁判所に対しては、福岡高等裁判所の判決はなぜおかしいのかという文書を提出しました。

安永訴訟弁護団がおかしいと指摘した点は次のとおりです。





■精神錯乱者として簡単に保護されてしまう。
 知的障害や精神障害のある人が普通に暮らしているだけで
 警察官に取り押さえられてしまい、日常生活を送ることができなくなる。

■精神錯乱者として保護する場合には、
 保護する相手がどこに住む誰で、どういう対応をするべきなのか、
 確認が必要なはずなのに、判決は確認が不要だとしているのはおかしい。

■健太さんの持ち物を調べていれば、
 簡単に障害者手帳や健太さんが働いていた
 授産施設のパンフレットなどを見つけることができ、
 健太さんに知的障害があるということがわかったはず。

■警察官が、健太さんに知的障害があるということを知らなかったことについて、
 その良し悪しを検討していない。

■警察官が、健太さんに知的障害などがあったことに対して配慮をしなかった。
 そのために健太さんは亡くなってしまったのに、このことを考慮していない。
 障害者差別にもつながりかねない。

■障害があるために警察官から不利益に取り扱われてはならない。

■判決では、対応している相手に知的障害などがあるかもしれない場合には、
 警察官はゆっくりと穏やかに話しかけて近くで見守るなど、
 特性に応じた対応をすべき義務があるとしている。
 しかし一方で、薬物中毒など、他の原因によらないことがある程度確実でなければ、
 ゆっくり穏やかに話しかけて近くで見守るなどの義務はないとしている。
  「あれ、この人はコミュニケーションができにくいのかな」と気づいたら、
 ゆっくりと話しかけるなどの対応を取るべき。

 判決に書いてあるように、精神錯乱状態を発生させる様々な原因の全てについて、
 これには当たらない、あれにも当たらない、とある程度確実にいえる場合でないと
 適切に対応しなくていいということにしてしまうと、
 適切に対応すべき場合はなくなってしまう。

■警察官は、取り押さえの途中でも、
 健太さんの顔色などを見て、体調が悪くなっていないかを確認できたのにしていない。

2016年3月11日金曜日

最高裁に上告

2015年12月21日に福岡高等裁判所が出した判決を受け、
安永健太さんのご遺族は12月26日、
最高裁判所への上告を決意されました。

弁護団は2016年2月29日、最高裁判所へ
上告理由書および上告受理申立理由書を提出しました。


最高裁判所は、ほとんど開廷することがありません。
開廷するのは、事件の当事者から直接話しを聞いた方がいいと判断した場合、
そして憲法違反や法律の解釈について問題があると判断した場合です。

安永健太さん死亡事件は、
「警察官は知的障害やコミュニケーション困難のある人に適切な配慮ある対応を行う注意義務がある」
という前進点はあったものの、結局は警察官個人の判断による行為によって死に至らしめられても
違法ではないという司法の判断が現状です。


このまま判例となってしまえば、日本全国で、
障害のある人たちが障害のない人と同じように
一人でいろいろなところへ行き、体験し、生活することについて
大きな不安をもたらすことになってしまいます。

障害者権利条約の第19条をはじめとする
基本的な考え方に逆行していると言わざるをえない日本にさせないためにも、
さらなるご協力をいただきますよう、
よろしくお願いいたします。

具体的な支援活動については、決定次第すぐに提起させていただきます。

裁判支援募金は継続しております
なにとぞご協力をお願いします。

2016年1月5日火曜日

安永健太さん死亡事件 福岡高裁判決のご報告

全国から期待を胸に250人が集結

12月21日(月)、福岡高等裁判所には、福岡、九州各県に加え、
埼玉、東京、神奈川、愛知、滋賀、京都、大阪、兵庫、岡山、広島から
250人が判決を聞こうと集まりました。

裁判所前で行なわれた門前集会では、
健太さんのお父さんである安永孝行さん、弟さんの浩太さん、
弁護団から今の心境を話されました。
いずれも今日の判決に期待する言葉が発せられました。

判決日の前週には、全国から届けられた
累計57,668筆もの慎重審理を求める要望書を福岡高裁に手渡しました。

しかし、判決は敗訴

そして15時より、
福岡高等裁判所第501号法廷にて、
記者14席含めた120の傍聴席が埋まるなか、
安永健太さん死亡事件の民事控訴裁判の判決が言い渡されました。

結果は、2014年2月28日に佐賀地方裁判所が下した原判決を
そのまま採用して請求棄却、敗訴でした。

傍聴席、全国から福岡に集まった250人は落胆の色に包まれました。

裁判官の口から異例の判決主旨が

判決文は「主文」と「事実及び理由」と構成されています。主文は以下の文章だけです。

1 本件控訴をいずれも棄却する。  2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

そして一般的に民事裁判では主文を裁判官が言い渡して裁判が終わります。
しかし今回は、判決趣旨と前置きし、この裁判での大きな争点について説明しました。
その内容は、
「警察官にはその人の言葉や行動等から、
知的障害やコミュニケーションの困難さがあると思われる場合には、
その人の特性を踏まえた適切な対応をすべき注意義務がある。
しかし安永健太さん事件の場合は、このような義務に違反したと評価できない」というものでした。

争点1 健太さんへの取り押さえは保護行為を超えているのでは

今回の裁判の主な争点は2つでした。
1点目は、障害があるなしに関わらず、健太さんへの取り押さえは保護行為を超えているのでは、という点です。
判決では、違法とはいえないと判断しました。
これはこれまでの裁判で証人尋問されてきた、
取り押さえた警察官がいう健太さんは激しく抵抗していた等の証言を引用して、
違反ではないとするものです。

ただし、今回の判決では、この事件は健太さんに知的障害があったから起きたと認めていて、
警察側がこれまで主張してきていた、
「障害があってもなくても健太さんへの取り押さえは正当」ということについては否定しています。
さらに、「ウー、アー」という健太さんの取り押さえ時の言動は、
障害や困難があることがわかる事情と認めているのです。

しかし、健太さんへの取り押さえは、違反とはいえないという判断を下しました。

争点2 障害などに配慮した対応が必要なのでは

そして2点目は、知的障害やコミュニケーションに不安がある等の人に
配慮した対応が必要なのでは、という点です。

判決では、一定数の障害者が地域で生活している日本の現状からみて、
警察官は知的障害やコミュニケーション困難のある人に
適切な配慮ある対応を行う注意義務があることは明らかである、と明言しました。

ただ今回の事件では、健太さんがうつ伏せで取り押さえされてから心肺停止まで
「長くても10分程度」だったなかでは、薬物依存などの可能性もあり、
知的障害があるかどうかは確実な判断ができないとしました。
 

無念の声が次々と

以上のように、今回の判決は
「警察官は知的障害やコミュニケーション困難のある人に適切な配慮ある対応を行う注意義務がある」
という前進点はあったものの、結局は警察官個人の判断による行為によって死に至らしめられても
違法ではないということであり、とにかく結論は敗訴でした。

判決後、安永健太さん死亡事件を考える会福岡事務所の古賀の進行で、
福岡中央市民センターにて行なわれた報告集会を行ないました。

傍聴者から「今日は多くの人たちと喜び合えると思っていた」との無念さや、
「この判決は人の命が軽んじられている」、
「あんなに簡単な言葉で命を決めていいのか」との怒りの声があがりました。

安永孝行さんは、
「裁判の結果は最悪だった。現場の警官次第で事が変わるのではないかという印象がある。
上告するかはこれから考える。言葉がちょっと出てこない。」

安永浩太さんは、
「完敗。兄ちゃん(健太さん)の場合は、知的障害者とわからず、
暴れたから取り押さえてもいい、と判決に書いてある。
また、亡くなったこと真相については書いていい。残念。
ここまでこられたのはみなさんのおかげ。まだまだ自分たちは頑張ろうと思う、
兄ちゃんを犬死にしないために。」

とその思いを話されました。

これからがはじまり

安永さんの弁護団長である河西弁護士や事務局長をつとめる星野弁護士からは、
「社会を変えることこそが勝つということであると思っている。
判決趣旨を裁判官が言うのは珍しい。これは傍聴者に伝えたいことがあるということ。
伝えたかったのは、警察官には障害などに配慮した対応をするべき注意義務が当然にあるということ。
この事件をさらに広く知らしめること、社会の理解を深めること、
そして変わることのために運動していくことが必要。」との発言がありました。

報告集会最後の言葉として、日本障害者協議会の藤井代表からは、
この事件をもっと世の中に広げていくこと、
地元の警察や弁護士などと連携して、
安永さん事件のようなことが起こらない地域との関係を作っていくことの
2点に提起がなされました。

最高裁判所へ上告するかどうかは、
安永さん親子が決められることですので現時点ではわかりません。
裁判が続くこととなればより大きな支援をしていきましょう。
そして、さらに安永健太さん事件を広く地域に知らせ、
障害のある人が安心して暮らす事の出来る地域をつくるための運動を継続し、
さらに大きくしていきましょう。



この報告のPDF版はこちら

弁護団の声明はこちら

西日本新聞の報道記事はこちら